紙と印刷というものについて、そしてデザインへの眼差し。

artworks

グラフィックデザインの歴史は、けっして長いものではありません。例えば、バウハウスでの美術労働教育の始まりをデザインとするなら、1919年、が始まりという事になります。印刷は1445年に、ヨハネス・グーテンベルクが活版印刷を開発した、とされています。まず、この400年以上にものぼるブランクをどう埋めればいいのでありましょうか。日本においては、ウイリアム・ギャンブルによって明朝体が齎されたタイミングを印刷元年とするなら、1869年(本木昌造が招致したのが)となります。果たして、このような、たかだか100年を少し越えたぐらいの短い時間の中で、日本人がグラフィックデザインで印刷を語る事は可能でしょうか。

原初としてのグラフィックデザイン的なものは恐らく日本にもあったでしょう。しかし、印刷と呼ばれグラフィックデザインとされたように、命名されたものは無かったのではないでしょうか。バウハウスが生まれたのが、ドイツである理由は、製造業が盛んな事が大きな要因にある事は容易に想像が出来ます。その上での陸続きの多様化された文化としてのヨーロッパが、今日に至るデザインを形成しているのだと考えています。それでは私達は日本で何を作っているのでしょうか。デザイナーと呼ばれている人達は何を従えて制作に勤しんでいるのでしょうか。もし、紙が誕生した2000年以上前から始まる、これらに纏わる製造の歴史の中で、グラフィックデザインというものを見据えるのであれば、果たして、私達はどれほどのものを携えながらグラフィックデザインというものに接しているでしょうか。

今、日本において、印刷という技術に最も精通していて、影響力の大きい第三者の存在は「グラフィックデザイナー」です。しかし、現在、そうであるはずのグラフィックデザイナーにも1つの問題が浮上しています。それは、印刷を知らない事です。印刷を司るポジションに居るはずのグラフィックデザイナーが印刷について不勉強な状況が発生し始めたのです。これは、推測ではありますが、想像していたよりも、印刷の現場にデザイナーという存在が関わっていなかった事を示唆しており、マッキントッシュやアドビに関連するDTPの環境がグローバル化した時に、海外と日本の状況に最初に述べた圧倒的な時間を含めた様々な誤差が生じたのでは、と想像しています。

その中で、同時に近年、印刷の技術を補完する動きが活発になってきました。しかもそれは、ほとんどの場合が「グラフィックデザイナー」を対象としているものであり、「グラフィックデザイナー」自身がそれを必要としている現実が其処にあります。「デザイン」とは何か、なんて事を問うような無粋な真似はしませんが、今、印刷というものにどう関わっているのか、というものを、デザイナーに限らず示す事は今日において非常に重要であると考えています。紙と印刷という組み合わせを、どのように扱っているのか、その善き例を知っているのは、「グラフィックデザイナー」に限らないという決定的な証拠と、同時に、より印刷をウマク使っているのが「グラフィックデザイナー」である、という実証を得られた事は、今回の展示での大きな成果であったように思います。

本展では、かつてあった「ウィーン分離派」の動きに似た様相を、今回、出品したメンバーから感じており、「グラフィックデザイン」というものを様式化した場合に、それから脱却した制作や、それを謳歌している制作など、様々な結果を得る事が出来ました。これらを意識して制作しているという事は、少なからず思想や様式的な何かとして、かつての「グラフィックデザイン」をある距離感を置いて見ているものであるのと同時に、印刷に対して、どのような眼差しで見ているか、という点において、全体的な総評として、しっかりと「技術」に依存する形で落とし込んでいる事は、日本においての「グラフィックデザイン」が、まさに生まれようとしているのでは、という大きな期待と、今までの「グラフィックデザイン」としていたものに対する、一種の決別のようなものがあるように感じました。もしくは、本展が紙や印刷に対する、なんらかの歴史的な意味を持つ事になるのであれば、この動きが、これから続くであろうデザイン史の1つとして、刻まれる事を強く願っています。

fengfeeldesign 阪口哲清

PRINT PUB 01について
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PRINTPUBは、印刷の世界を公開するシーンの1つとしてスタートをいたしました。活動期間も2年が過ぎまして、その間にはfengfeeldesignの周辺を主体とした印刷加工を公開して参りました。また、会員を募り、その人数も30人を越えまして、そろそろ会員の皆さんと絡み乍ら制作&パブ(公開)が出来ればという考えにいたり、今回、ペーパーボイス展覧会「PRINTPUB01」を開催する運びとなりました。昨今、印刷技術の補完の動きが活発化してきました。この動きというのは、かつてのウィーン分離派ように、様式に捉われない制作を目指した時に生じた、技術の抽出作業に非常に似ているような気がしております。今回の展覧会では「デザイン」という様式を主体に置かず、「印刷加工の公開」とする事で、デザイナーによるデザイン主体の展覧会ではなく、「印刷加工」に纏わる技術や知恵や恩恵を主体とした展覧会に仕立てております。本展では実際に印刷物を自由に手に取っていただき、それらを流布、もしくは無料配布する事で、同時により多くの方に印刷物との関わり(印刷所、デザイナー、作家、営業…etc、全ての)について考える機会になればと思います。

開催場所:
平和紙業株式会社 ペーパーボイス大阪 〒542-0081 大阪市中央区南船場2-3-23
期間:
2014年3月17日(月)〜3月27日(木)/時間:9時00分〜17時00分
※土曜日、日曜日、21日は開催しておりません。
※最終日の27日(木)は14時00分で終了いたします

出品者:
小玉文/小熊千佳子/野田久美子/特撮ギター研究所/若井真/西田優子/町田宗弘/竹田正典/勝田麻子/長田年伸/Mujika Easel/松本るみ子/丸山晶崇/宮崎菜通子/O-PUB/黒子

作品の全容はこちら→ https://www.facebook.com/media/set/?set=a.652126114852642.1073741829.354397357958854

PRINT PUB 01 展示印刷物仕様目録のpdf版はこちら
→ http://www.fengfeeldesign.org/item/printpub01_itemlist.pdf