ギターの歴史


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一般的にロックンロールの登場と共に世の中に姿を現したとイメージされているエレクトリックギターの歴史は長く、その原初的な形態は早くも20世紀初頭、1910年代にその姿を現している。それはヴァイオリンやバンジョーといった楽器に電話機の伝導体を組み込んでその音を増幅させる今でいうセミ・アコースティック的なものであり、その“増幅”も楽器というよりは物珍しいアイデア商品といった態のものであったが、これらの珍奇な発明品・電気式弦楽器はギター製作者だけではなく、1920年代から30年代にかけて、世界中の多くのアマチュア発明家、玩具製作者によって製作されていた。その中にはギターのブリッジ部分にカーボンマイクロフォンを仕込み、弦の振動を電気信号に変えるという今のピックアップの仕組みに近いものも登場している。しかし、一般に当時は音楽の世界に楽器の音を電気によって増幅させる必要性が存在しなかった為、本格的に楽器としてのエレクトリックギターが考案・開発されることはまだなかった。また、電気に頼らずにギターの音量を増大させる発明として、ブリッジの下にアルミニウム製の共鳴板を取り付けたギター、いわゆるリゾネーター・ギターが発明されたのもこの時期であるが、後にそれらのギターはエレクトリックギターの跳梁と共にそのシェアを奪われ、現在は一部の音楽ジャンルの演奏者たちによって使用されている程度である。そして1930年代に入り、アメリカでいわゆるビッグバンド形式(オーケストラ編成)のジャズが流行するようになると、サックスやトランペットといった楽器群の中でひときわその音が小さいギターはその存在感を示すために、どうしてもその音をほかの楽器と同じか、あるいはそれ以上に大きく鳴らす必要が生じてきた。そこで最初期の楽器的なエレクトリックギターの一群が誕生することとなる。それらのギターの大半は1910年に登場したアコースティックギターに機械を取り付けることでその音を増幅させるというアイデアを継承しており、最初期に登場したタイプはアコースティックギターにピックアップを取り付けるホロウ・ボディと呼ばれるタイプのものであったが、このタイプの楽器はピックアップがアコースティックギター特有の胴体の共鳴を機械が拾ってしまい、必要な音だけでなく不必要なフィードバックまで発生させてしまうという欠点を持っていた。それを克服したのが後にリッケンバッカーとなるナショナル・ストリング・インストゥルメンツ・コーポレーションに所属していた発明家のジョージ・ピーチャムで、彼はアコースティックギターに音を増幅させる装置を取り付ける代わりに、楽器の機構そのものをエレクトリック向けに作り替えてしまうことを考案した。こうして彼が当時先述のリゾネーター・ギターの共鳴板を製作していた機械工場主のアドルフ・リッケンバッカーと協力して作り上げたのが、ボディがすべてアルミニウム製になっている世界初の完全なエレクトリック・ラップスティールギターであるフライング・パンである。フライング・パンはその後二人が設立した会社リッケンバッカーによって1939年まで製造・販売された。その後1934年にVIVI-TONEがボディ部分がアルミニウムではなく全て木材で作られたボディに穴の開いていない(このようなボディを通称ソリッドボディと呼ぶ)エレクトリック・スパニッシュギターを発表すると、1936年にはドラムメーカーとして知られるスリンガーランドも同様にボディを全て木材で作り上げたSlingerland Songster 401と呼ばれるモデルを発表した。フライング・パンがギターのタイプとしては厳密にはラップスティールギターであり、VIVI TONEのものも通称Electric Spanishと呼ばれるスパニッシュギターであったのとは違い、スリンガーランドのこのモデルは最初からエレクトリックギターとしてボディを考案したとされている為、一部ではこのスリンガーランドのモデルこそが厳密な意味での世界最初の(楽器としての)エレクトリックギターだと言われている。そして同年、ギブソンが初の商業ベースのエレクトリックギターとなるES-150を発表、そのシンプルなネーミング(名前のESはElectric Spanishの略、150は販売価格)と150ドルという当時としては破格の値段設定で成功を収めたことで、エレクトリックギターは一気に楽器市場のメインストリームに躍り出ることとなった。そして1946年、エレクトリック・スパニッシュギターの製作に興味を持ったラジオ修理工のレオ・フェンダーがフェンダー・エレクトリック・インストゥルメント製造会社を設立、いくつか試作品を製作したのち1949年に初の量産型エレクトリックギターモデルとなるエスクワイヤーを、翌1950年にブロードキャスターを発表したことが、音楽市場に対する決定打となった。それらのギターはギブソンや他のギターメーカーの抱えていた製作時間や複雑な工程といった問題をボルトインなどのシンプルな独自の製法を取り入れることによってクリアしており、単なる楽器というだけではない、工業製品としてのエレクトリックギターを確立させた。その後1952年にはギブソンがギタリスト兼発明家であるレス・ポールが1941年に開発し、ブロードキャスターにも影響を与えたというギターモデル「THE LOG」をベースにギブソン・レスポールを開発、翌々年にはフェンダーからフェンダー・ストラトキャスターが発表され、現在に至までのエレクトリックギターのスタンダードモデルが確立された。その後エレクトリックギターはロックンロールの興盛とともに世界中に浸透、フライングVやダブルネックギターといった変種モデルを生み出しながらも、様々な音楽ジャンルの演奏者たちによって広く使用され続けている。

取材・協力 PRINTPUB02会員NO.00001:三輪一樹 http://www.miwakazuki.jp
文章 PRINTPUB02会員NO.00002:NR 青のりしめじ http://aonorishimeji.com
編集 PRINTPUB02会員NO.00000:fengfeeldesign http://www.fengfeeldesign.org

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