今、世界には様々な音楽があふれています。日本に住んでいる私達は、まず脳裏に浮かぶのがJ−POP、そしてクラシック、ジャズ、ロック、ワールドミュージック、クラブミュージック、などなど、多くのジャンル、多くの音楽が町中至るところにあって、それがTV、ラジオ、インターネットなど、様々な環境から無尽蔵に汲み出され続けています。聴く人も様々で、その人一人一人によって音楽の定義も違えば、その価値、自分の中での位置づけも違います。そんな風に60億人に60億通りの音楽観がある一方で、音楽を取り巻く物理的な状況も常に変化し続けていると思います。かつてレコードがCDに駆逐され、その姿を消したように、今度はCDが、ダウンロードという手段に駆逐されつつあり、また、そういう素人目でわかるところ以外にも、楽器の演奏技術や、音楽の録音技術等、そういった様々な細かい点においても、きっと世界は僕の想像もつかないような細かいところで日々常に何かしらの進歩と成長を続けており、オリコンでいきなり新人アーティストのデビュー曲が1位を獲得するような、想定外のヒットも巻き起きているような気がします。しかしそうやって蓄音機が発明されやがてMP3プレーヤーになったり、子供の頃はJーPOP好きだったけど今はバリバリのメタラーだったりするといった過程は、あくまで音楽をとりまく状況であり、音楽それ自体についてのことではありません。音楽それ自体は何万年も前からきっと人類の傍らにあり、その都度の文化レベルにおけるエレキギターやストラトヴァリウスによってずっと存在してきたのです。そういった音楽そのものを、かつて天文学者たちが、夜空に散らばる星々の動きや、X線の放射の観測から、ブラックホールという巨大な存在の割り出しに成功した時のように、少しずつ明らかにしていきたい。単純な音の感想や、演奏者の個人的な歴史を振り返ったりするだけではなく、もっときちんとした歴史、人類の歴史や、その国の言語の歴史、楽器の発達史や文化の変遷、人間の身体的な構造と演奏という動作との関係、そういった様々な観点から統一的に音楽を観測し科学的にそれを分析し、その全貌を解き明かして行きたい。音楽を本当の意味でサイエンスする解剖学実験場、それがNRです。